#山の中の木工教室

僕は首都圏でディスプレイ、家具製作、看板など、あらゆるジャンルの空間演出の制作に携わっていた。

その中でもハイブランド店舗をメインでやっていたので、その辺の店舗とは、ちょっと違う最先端を走っていた。

つまりはファッションショーで言うと、ランウェイを走っていた様な物だ。

歳を重ね田舎暮らしをしたいと家内に言われ、山奥に移住した。

今では山の中の木工塾みたいな会社に勤務している。

ここは日本全国から木工を学びに2年間という期間を得て技術や知識を学びに来る若者が集まる所だ。

無垢の木工がメインなので、私はジャンルが違うので、指導者という立場では無いが、私のジャンルの仕事を一人で淡々とこなしていく中、若者の姿をいつも横から見ていて感じる事を伝えたい。

2年学んで卒業していく若者は就活をして、やがて就職して旅立っていくのだが、給料をいくら貰えるの?と聞くと、大体相場16万位なのだ。

僕は驚かされる。
お金をかけて、2年も学んで、しかも怪我すらする可能性のある職業に16万の給料とは、どういうものか?

だってコンビニ店員と変わらない様な扱いではないか。

しかし多くの木工所はその辺が普通らしい。

そこで5年働いて、どれ位給料が上がるのか?

まず10年居ても、3-5万円がいい所だろう。

彼らはその時30-35位の歳になっているだろう。

それでは結婚すらできないのでは無いだろうか?

中には東大、京大、その他有名大学出身の人すらいる。

勿論高卒の子もいるが、
僕には理解出来ないのが本音だ。

無垢は本物の木、森の環境循環というキャッチコピーで、その気になって来るのだろうが、それはあたかも美味しいグルメのお店という、宣伝文句に列を作る人達に似ている。

大きな括りで木工という物を捉えて憧れているのだろうが、木工と言ってもかなり幅広いジャンルがある事を知らないし、同じジャンルでも、何層にも分かれている事を知らない。

その子達に気付きを持たせるために、たまに色々な事を教えるが聞く耳を持たない。

究極の所、まぁ、やってみたらいいよ。と思うしか無いのである。

ある時気がつくと、10年過ぎてましたとか、木工を途中で断念せざるを得ない事になり、また人生振り出しに戻りましたと言うのが切ないから、聞かせているのに、まあ、それが若さなのかなと、最近は黙って眺めているだけになってきた。

広告に流される人々は、その背景に仕掛け人がいる事を知らず、そのキャッチコピーに酔っているだけだと、世間の人はいつ気がつくのだろうか?

本質を見抜く力とは、学校で教えてはくれないので、親が教えないとならないのだが、その親がそもそも、流される人が多い世の中だから仕方がないと感じる、この頃というお話。